⓭「所長つうしん」・・・ GIFT FROM THE SEA
所長つうしん 2017年12月11日
GIFT FROM THE SEA
私がしばしば読む本のタイトルです。
『海からの贈物』と訳されています。
著者であるアン・モロウ・リンドバーグ(1906-2001)は、大西洋横断飛行を初めて成し遂げたあのチャールズ・リンドバーグの妻です。夫妻揃って優れたパイロットだったそうですが、この本の中では、そのパイロットとしての経歴には何も触れず、20世紀のアメリカに暮らす普通の女性としての思索の跡が書かれています。
著者は、夫や子どもと少しのあいだ離れ、フロリダの海辺の小さな家で休暇を過ごし、その滞在中か直後ぐらいにこの本を書きました。
砂浜で見つけた貝殻をモチーフに、「人生」「夫とのかかわり」「人と人との関係」「独りの時間」「現代の女性の生き方」といったものについて語っています。
彼女が生きた時代背景として、ちょうど1960年後半以降に第2波フェミニズムがありました。
これは、アメリカの白人中流階級の女性の中から生まれたものです。彼女たちは、戦後再び女性を囲い込んだ家庭という「私領域」で起こる諸問題が、社会における男女の不平等な権力関係と密接にかかわっていることを看破し、制度や意識の見直しを行っていったと聞き及んでいます。
アン自身も当然、その渦中にあって様々なことを思い考えたであろうことは想像できます。
さらに、訳者の吉田健一氏はあとがきの一部で、「現代社会とか、世界平和とかいう大きな問題がいかに我々の生活と密接に結び付いているかを本書は示しているばかりでなくて、そういうものが凡て我々の生活を出発点にしているという我々が忘れ易い事実を、著者が瞬時も見逃さないことが、この『海からの贈物』にこれだけの説得力を与えているものと思われる」と述べています。
この本が書かれたのは1950年頃で、もう今から65年以上前のこと。著者の語りからうかがえる当時の時代背景(アメリカ)は、私の目から見ると、現代の日本と少し似ているところがあるようにもみえます。
*個人が解放されて生活の自由度は上がったものの、生活は雑然としている
*みんながそれぞれに忙しく、自分と語り合う時間を持てていない
*多くの人が疲弊し過度に孤独を恐れている など
この本の中では、
*生活をできるかぎりシンプルに保つこと
*人と一緒にいる時間と独りで何かをする時間とのバランスが大切
*自分の頭で考えること
*ときには何も考えないこと など
といったことが書かれていて、「人生をよりよくしてくれるカギかな」と思えるような箇所があり、「そうそう、それそれ!」と頷いてしまいます。
共感したり感心したり、面白く読める本ですので、私からのオススメ本の一冊です。
なお、ハートフルスクエアーG2階にある岐阜市女性センターの図書コーナーには、主に女性にかかわる選りすぐりの本があり、貸出しもしておりますので、是非お立ち寄りいただけると嬉しいです。
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さて、あっという間に師走となりました。
拙筆でしたが、「所長つうしん」を1年間で13回掲載することができました。
また皆様方にとって、平成29年はどのような年になりましたでしょうか。
岐阜市女性センターは12月29日(金)~1月3日(水)まで年末年始休みとなります。
1年間ご愛顧いただきまして誠にありがとうございました。
どうぞ良い新年をお迎えください。
岐阜市女性センター所長 寺松みどり
参考: GIFT FROM THE SEA/Anne Morrow Lindbergh/吉田健一訳/新潮文庫/1955年
問題キーワード111/矢澤澄子監修/(財)横浜市女性協会/2001年
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