❽ 「所長つうしん」・・・ 「ふつう」ってなに?
所長つうしん 2017年7月10日
わたしの「ふつう」と、あなたの「ふつう」はちがう
わたしの「ふつう」と、あなたの「ふつう」はちがう。それをわたしたちの「ふつう」にしよう。そんなキャッチフレーズの愛知県人権啓発ポスターが、「いい言葉」「内容も具体的で分かりやすい」とネット上で話題を集めています。高齢者や障がい者、性的マイノリティなどの立場の人権問題を漫画で表現し、大橋裕之さんの絵も好評だそうです。
7種類のポスターを作成しており、キャッチコピーが印象的でメッセージ性が高いのです。
例えば「女性の人権問題」のテーマは「固定概念」です。
「家事をするのはお母さん」という価値観に、「誰が決めたの?」と子どもが問うことで家族が変わります。
妻:「ただいま~。仕事で遅くなっちゃった~」
夫:「も~! お腹すいたよ~」 ※ソファで新聞を読んでいる
妻:「はいはい、すぐご飯の用意するから…」
子:「お母さんが家事を全部やるって誰が決めたの?
<この日から家族に新しいルールが加わった>
※夫がキッチンで料理、子が洗濯物をたたみ、妻が片付ける姿が描かれている。
ポスターの制作者は、「お父さんだけが悪いのではなく、お母さん自身もなんとなく“そういうもの”と思い込んでいるのがポイント。自分の中にある固定概念に気付いて、疑問を持つことから解決できるものがあるんじゃないかという思いを込めました」とコメントしています。
その「ふつう」、誰が決めたの?
今年も昨年同様、私にとって、「人権から始まり人権と向き合い続ける年」になりそうです。
折に触れそんなことを考えていた矢先、この愛知県人権啓発ポスターを知りました。
私は、幼い頃「『ふつう』の子どもっぽくないね」とよく言われました。もちろん良い意味で褒められた訳ではありません。
「感受性が強すぎる」「自閉症気味なの?もっとお話をしなさい」「何を考えているのか分からない」、そしてついには「そんなこと、『ふつう』の子だったら考えないよ」とまで言われて落ち込み、とにかく自己否定しまくりの人生でした。
とはいうものの、「ふつう」って、どんな子なのかイメージもつけられず、ましてや努力したくてもどうしたらよいのかも全く分かりませんでした。
その「ふつう」って、一体全体誰が決めたのでしょう。
私のような思いをしながら育った子どもが、意外と多いのではないでしょうか。
みんなちがって、みんないい
金子みすゞさん(1903-1930)は、大正末期から昭和初期にかけて活躍された日本の童謡詩人です。心温まる詩を書かれる方で、ファンもたいへん多いと聞いています。
彼女の作品の一つに『私と小鳥と鈴と』という秀逸作があります。
その中で、彼女は、
「…前略…
鈴と、小鳥と、それから私 みんなちがって、みんないい」
と謳っています。
彼女の言っていることは、ごく当たり前のことなのに、当たり前ではないから心に響くのかもしれません。
それぞれが、別々で、でもそれに優劣は無いことを、それぞれが、素晴らしいのだということを、これほど上手く表現した文章はないと思います。
子どもの頃に、もしもこの詩と出会えていたら…、もしも先述した愛知県人権啓発ポスターと出会えていたら…、私の考え方や生き方はきっと変わって拡がり、もっと自分のことも周りの人のことも大切にできたような気がします。
「みんないい」
何かと基準を決めて競い合うこの時世です。幸せの秘訣は自分と誰かを比べないことかもしれません。
一人ひとり、「ちがい」があるのは当たり前です。
多様な価値観を受け入れて、お互いの個性を認め合えれば、どんなにか生きやすく楽しくなることでしょう。
「みんないい」 この言葉を聞くと、涙が出そうになるのは私だけでしょうか。
岐阜市女性センター所長 寺松 みどり
岐阜市女性センター
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